恋する猫は、月の下~花の名のキミ~
彼がかかえている、得体の知れない寂しさと切なさに

あたしは、ついにたえきれなくなり

「あの…!何か悲しいことでもあるの?」

思わず聞いてしまった。

彼は少し驚いたのか、何度かまばたきをして

それから興味深そうにあたしを見つめた。

彼の瞳に見つめられ、あたしの心臓はどんどんうるさくなる。

狂ったような心音をなんとか、抑えようと背を丸めたあたしに、彼はやはり穏やかに言った。
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