恋する猫は、月の下~花の名のキミ~
『いいかい、みんな。月の下では気をつけるのよ』

母さんは言う。

『どうして?』

兄妹で一番上の兄、黒兄(クロニイ)が聞く。

『月の下で人間になりたいって思ったら、それは叶ってしまうから。

人間になったら二度と猫にはもどれないの』

『どうしてー?』

今度は二番目の兄、しま兄が聞く。 母さんはそっと声をひそめた。

『すべて忘れてしまうから』

『やだぁー、人間なんてなりたくなぁい…』


あたしが泣きわめくと母さんは決まってこう言った。
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