恋する猫は、月の下~花の名のキミ~
あたしは尻尾をぴんと立てて、空を仰ぐ恵都の横顔をしきりに見つめた。

すると恵都が不意に言う。


「雲を見ていると、思い出せそうな気がするんだ」

「何を?」

「何か…大切なこと…」

「大切なことって?」

あたしが聞き続けると、恵都は空から視線を落とし


「わからないんだ」

自分の足元を見ながら力無くつぶやいた。
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