恋する猫は、月の下~花の名のキミ~
息を切らしながら言い切ったあたしを恵都は静かに見つめていた。

ゆるやかな風が恵都の柔かな髪の毛を揺らして通り過ぎる。
恵都の髪は、月光を浴びた、すすきの穂先のような

繊細な銀色をしている。

綺麗…

素直にそう思った。

母さんの昔話を印象づける、恐怖でしかなかった月を


こんなふうに思ったのは初めてかもしれない。

あたしが、ほうけたように恵都を見ていると
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