恋する猫は、月の下~花の名のキミ~
「優しいんだね」

恵都がつぶやいた。

「でも、あんまり優しくしたら、きみを離せなくなるよ」


きみを困らせたくはないから…笑ってみせる恵都に

あたしの胸は、なぜか甘くうずいた。


恵都があたしを離したくないと言ったら…

あたしは困るのかな…


はっきりと答えは出ないままだったけど

あたしは背中を撫でる恵都のぬくもりの中にその答えがあるような気がして

何度も背を往復する恵都の手に、身をゆだねていた。


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