恋する猫は、月の下~花の名のキミ~
「おまえ、母さんが言ってた話、忘れたのか…?」

しま兄に言われ、あたしはぴくりと体を固くした。


忘れていたわけじゃない。

今だって、満月が近づけば全身が恐怖で凍りつくほど、恐ろしい。

一人で眠れず、黒兄のそばで泣いていたのは、ついこの間のことだ。


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