恋する猫は、月の下~花の名のキミ~
恵都に聞かれ、あたしは言葉をなくしたように、こくこくとうなづいた。

あまりに情けない様子に、あきれたのか恵都はひと息ついて

絵筆を水差しに入れた。


それから、あたしのそばへ近づいてきた。

何か注意でもされるかと、思わず目を閉じると



「綺麗だよ」


恵都の手が、そっと背中に触れた。
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