ヘヴンリーブルー
『ウォレン! …ウォレン!!』
「ん?」
通りがかった建物の影から自分の名前を呼ぶ声に気付き、ウォレンはその主を探した。
『十九時にいつもの場所で』
姿を見せずそう呟いた主は、そっとその場を去っていった。そのやり取りに気付いた者は誰一人いない。
相変わらず行動の早い奴だ。
ウォレンは一人含み笑いを浮かべた。その周りではディックバード号の船員たちが皆一様に浮かれた顔をして歩いている。
ここはどの国にも属さない町、ポート・ウェイン。
どんな船乗りたちもこの町への停泊を心待ちにしている。この町は花に溢れ、自由に溢れ、気さくな人々が優しく迎えてくれる唯一の場所なのだ。
様々な場所から人種を隔てず多くの船乗りが集まり、連日連夜酒を囲む男たちの笑い声が夜遅くまで響いている。そしてディックバードの船員たちが目指しているのは、今夜行われるパーティの会場だった。
年に二回、ディックバード号が訪れるたびにこの町では盛大なパーティが催される。このパーティはポート・ウェイン全体がディックバード号を大歓迎することになったある事件の日から定期的に行われている祭りのようなものだ。この日を船員たちも、ポート・ウェインの住民たちも楽しみにしている。
「始まるまでにまだ時間がある。一緒に来い」
レイズのその言葉に導かれて辿り着いたのは、ウインドウ越しに綺麗な服が飾られている一軒のこじんまりとした可愛い店だった。
「レイズ! お帰りなさい」
店の奥から出てきたのは、息を呑むほどに美しい女(ひと)だった。
「久しぶりだな、ユナ。元気だったか?」
「ええ。あなたに会えるのを心待ちにしていたわ」
ユナと呼ばれたその女は、頬を上気させてレイズと言葉を交わしている。
直感…だろうか。彼女のレイズに寄せる想いが手に取るようにわかる。そして間違いなく彼も、彼女を大切に思っている。
「彼女…は?」
ユナはフィスを一瞥するとそう問いかけた。
「ああ、ディックバード号の客人だ」
「そうだったの」
「ユナ、悪いがこの客人のために何着か服を用立ててくれ。多少高くとも構わない」
「かしこまりました。それでは」
「おい、多少だぞ。多少。あまり高すぎて似合わなかったら困るからな」
そんな言葉にユナを始めとした数人の女性スタッフがクスクスと笑う。
「余計なお世話よ! レイズ!」
顔を真っ赤にしたフィスは、怒鳴りながらレイズの背中を叩いた。
「ん?」
通りがかった建物の影から自分の名前を呼ぶ声に気付き、ウォレンはその主を探した。
『十九時にいつもの場所で』
姿を見せずそう呟いた主は、そっとその場を去っていった。そのやり取りに気付いた者は誰一人いない。
相変わらず行動の早い奴だ。
ウォレンは一人含み笑いを浮かべた。その周りではディックバード号の船員たちが皆一様に浮かれた顔をして歩いている。
ここはどの国にも属さない町、ポート・ウェイン。
どんな船乗りたちもこの町への停泊を心待ちにしている。この町は花に溢れ、自由に溢れ、気さくな人々が優しく迎えてくれる唯一の場所なのだ。
様々な場所から人種を隔てず多くの船乗りが集まり、連日連夜酒を囲む男たちの笑い声が夜遅くまで響いている。そしてディックバードの船員たちが目指しているのは、今夜行われるパーティの会場だった。
年に二回、ディックバード号が訪れるたびにこの町では盛大なパーティが催される。このパーティはポート・ウェイン全体がディックバード号を大歓迎することになったある事件の日から定期的に行われている祭りのようなものだ。この日を船員たちも、ポート・ウェインの住民たちも楽しみにしている。
「始まるまでにまだ時間がある。一緒に来い」
レイズのその言葉に導かれて辿り着いたのは、ウインドウ越しに綺麗な服が飾られている一軒のこじんまりとした可愛い店だった。
「レイズ! お帰りなさい」
店の奥から出てきたのは、息を呑むほどに美しい女(ひと)だった。
「久しぶりだな、ユナ。元気だったか?」
「ええ。あなたに会えるのを心待ちにしていたわ」
ユナと呼ばれたその女は、頬を上気させてレイズと言葉を交わしている。
直感…だろうか。彼女のレイズに寄せる想いが手に取るようにわかる。そして間違いなく彼も、彼女を大切に思っている。
「彼女…は?」
ユナはフィスを一瞥するとそう問いかけた。
「ああ、ディックバード号の客人だ」
「そうだったの」
「ユナ、悪いがこの客人のために何着か服を用立ててくれ。多少高くとも構わない」
「かしこまりました。それでは」
「おい、多少だぞ。多少。あまり高すぎて似合わなかったら困るからな」
そんな言葉にユナを始めとした数人の女性スタッフがクスクスと笑う。
「余計なお世話よ! レイズ!」
顔を真っ赤にしたフィスは、怒鳴りながらレイズの背中を叩いた。