ヘヴンリーブルー
「レイズ船長、ユナも大人の女に近付いてきたでしょう? 父親の私が言うのもなんですが、素直なところはそのままいい娘に育ちました。これも全部船長のおかげです」

「俺は何もしていないが?」

「いいえ。あなた様のおかげです。なあユナ、お前もそう思うだろう?」

「ええ」

 少し酔いの回っているザイラスは顔を赤らめて話す。レイズもユナも苦笑いでそれを聞いているのだ。

 輪から外れたフィスはその様子を無言で見つめる。

 これって…父親が娘の恋心を案じて、その恋の相手にうちの娘をもらってくださいって言ってるのと同じじゃない。

「お父様、落ち着いて。レイズが困ってるわ」

「いや、でも私はお前の良さをレイズ船長にすべてお伝えしようと‥」

 言いかけたところで背後から町長を呼ぶ声が上がる。

「ん、何だ? ちょっと申し訳ないが行ってきます」

 レイズにそう言うとザイラスは足早にその場を去った。

「本当にもう、ごめんなさいね。酔っているのよ」

「いや、構わない。元気で何よりだ」

 ってどうしてすぐにそう二人の世界に入っちゃう訳?! 私一人邪魔者みたいじゃないの。

 イライラしながら、けれどどうすることもできずにその場にいなければならないのは、かなり辛い。イライラする必要などどこにもないはずなのに。

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