ヘヴンリーブルー
「船長、飲んでますか?」

 ウェイ・オンとジョン・マークが、グラスを片手に上機嫌で近付いてきた。

「ティムズは向こうで酔い潰れそうになってますよ。飲み比べをしてて、ほらあの体格のいい‥」

「ああ、さっき誘われたが今日はティムズが犠牲になってるのか」

「ティムズも歳にはかなわないって言いながら一生懸命張り合ってましたけど」

「そうか。では助け舟を出しに行ってくるか」

 レイズはようやく腰を上げる。フィスがちらりとユナを伺うと、彼女はレイズが席を離れることにほんの少し悲しげな顔を見せていた。

 こちらに背を向け歩き出したレイズは、ふと足を止め振り返る。

「船長?」

 ウェイ・オンが不思議そうに問いかけると、レイズはこちらに視線を合わさないまま言う。

「うちのお姫様はこの町の住人に顔を知られてないからちょっかいを出すようなやつらがいるかもしれない。絶対に一人にするんじゃないぞ」

 その言葉にウェイ・オンとジョン・マークは意味有りげな笑顔で顔を見合わせる。

「船長、フィス様のことが気にかかられているんですね。それは恋ですか?」

 ジョン・マークが浮かれた様子で言うと、レイズはほんの少し咳き込んだ後、きっとこちらを睨み付けた。

「何を勘違いしている。そういう意味ではない」

 フィスの心がズキン、と痛む。それだけを言うと再び彼は歩き始めた。

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