ヘヴンリーブルー
「これは恋だな」
「うん、そう思った」
レイズの後姿を見送りながら、ウェイ・オンとジョン・マークはそんなことを言い合っている。
「私、ちょっと父の様子を見てきますね」
突然ユナが席を立った。フィスが頷くと、ユナは静かな笑顔でその場を去った。少しの沈黙が流れる。
「やべぇ。ユナ様がいるのに」
「あぁぁぁぁぁ…。やっちゃった」
「何が?」
一人冷静なフィスが会話に入ると、ジョン・マークが頼りなげな瞳で訴えた。
「ユナ様が船長に想いを寄せていることはご存知ですか?」
「…少しは」
「それなのに…それなのに、ユナ様の前で悪いこと言っちゃいましたよね?」
悪いこととは、レイズがフィスに恋をしたと冷やかしたことらしい。
あー酔っ払いは扱いにくい…。
そんな風に思いながらフィスは溜息をつく。
「そうかしら。だってレイズは『勘違いするな』と言っていたわよ? あなたたちも聞いたでしょう」
「でも、それは照れの裏返しなんですよ」
「どうしてそう思うの?」
「だって、このパーティでは、いつも船長は一つの席に長い時間いることはないんです。滞在時間は僅かだというのに、こんなに歓迎してもらっているのだから、できるだけたくさんの人と関わりたいと言っていろんなところを回られるんですよ」
「それが今日の船長ときたら、フィス様のいるこの席から片時も離れようとしない。しまいにはさっきのあの言葉。これを他にどう解釈しろって言うんです?」
途中ジョン・マークに変わってウェイ・オンが口を挟む。
「この席にずっといたのは、きっと…疲れてただけよ」
そう呟きながら、それでもフィスはほんの少し心が温まるのを感じていた。一人にしないようずっと気を使ってくれていたのだということが嬉しかった。
言っていることは冷たいが、本当は誰よりも優しい。そんなレイズに恋をする人間がどれだけいるのだろう。きっと、数え切れないくらい…。
決められた婚約者のいる私が、その中に入ることはないけれど―――――。
またふとオルドアでの現実が頭の中に蘇る。
「うん、そう思った」
レイズの後姿を見送りながら、ウェイ・オンとジョン・マークはそんなことを言い合っている。
「私、ちょっと父の様子を見てきますね」
突然ユナが席を立った。フィスが頷くと、ユナは静かな笑顔でその場を去った。少しの沈黙が流れる。
「やべぇ。ユナ様がいるのに」
「あぁぁぁぁぁ…。やっちゃった」
「何が?」
一人冷静なフィスが会話に入ると、ジョン・マークが頼りなげな瞳で訴えた。
「ユナ様が船長に想いを寄せていることはご存知ですか?」
「…少しは」
「それなのに…それなのに、ユナ様の前で悪いこと言っちゃいましたよね?」
悪いこととは、レイズがフィスに恋をしたと冷やかしたことらしい。
あー酔っ払いは扱いにくい…。
そんな風に思いながらフィスは溜息をつく。
「そうかしら。だってレイズは『勘違いするな』と言っていたわよ? あなたたちも聞いたでしょう」
「でも、それは照れの裏返しなんですよ」
「どうしてそう思うの?」
「だって、このパーティでは、いつも船長は一つの席に長い時間いることはないんです。滞在時間は僅かだというのに、こんなに歓迎してもらっているのだから、できるだけたくさんの人と関わりたいと言っていろんなところを回られるんですよ」
「それが今日の船長ときたら、フィス様のいるこの席から片時も離れようとしない。しまいにはさっきのあの言葉。これを他にどう解釈しろって言うんです?」
途中ジョン・マークに変わってウェイ・オンが口を挟む。
「この席にずっといたのは、きっと…疲れてただけよ」
そう呟きながら、それでもフィスはほんの少し心が温まるのを感じていた。一人にしないようずっと気を使ってくれていたのだということが嬉しかった。
言っていることは冷たいが、本当は誰よりも優しい。そんなレイズに恋をする人間がどれだけいるのだろう。きっと、数え切れないくらい…。
決められた婚約者のいる私が、その中に入ることはないけれど―――――。
またふとオルドアでの現実が頭の中に蘇る。