ヘヴンリーブルー
「お前は、オルドアの姫なのか?」

 ゆっくりと、けれどしっかりと、レイズはそう言った。

 やっぱり…。

 ウォレンは知っていたのだ。ポート・ウェインでその事実を知ったのだ。それは別に不思議なことじゃない。ポート・ウェインには様々な国から様々な船乗りたちが集まると聞いた。その中に自分の顔を知っている人間が一人くらいいたとしても納得がいく。

「そうよ」

 レイズの瞳が自分の姿を捉えていることに気付いていた。しかし視線を合わせることはできなかった。

「リブレフォールが今、オルドアとディストランドを落とそうとしているの。それぞれの国は大きく膨れ上がってしまったリブレフォールに、単体で対抗することは難しくなってしまった。ディストランドの国王と、オルドアの国王…つまり私の父が下した決断は、二つの国を一つにしてリブレフォールに勝る新大国を作ること。そのために私はディストランドの王子と結婚することになっているの」

「オルドアには三人の姫がいるというのに、なぜ末っ子のお前が?」

「姉たちは…父に反発しているの。国を守るということよりも、自分たちのことで精一杯みたい。でも私は父の苦悩を理解しているつもり。私たち姉妹の中の誰かが国を守らなければならなくて、それを理解できるのが私しかいないのなら、私が父の意思を受け止めます」

「ディストランドの王子は、今は自分の自由を見つけるためだけに動いている身勝手な奴だ」

「知っているの?」

 フィスは驚いてレイズを見上げた。

「我が国の、王子だからな」

 まだ彼のことを何も知らなかった。どこから来て、何をしている人なのか。なぜディックバードに乗って海を旅しているのかも。

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