ヘヴンリーブルー

「あなたは、ディストランドの人なの?」

「…ああ」

「そう…。ディストランドは、どんな国なのかしら?」

「穏やかな国だよ。オルドアより少ないかもしれないが、自然もたくさんある。輸出業が盛んで、ディックバードも様々な国にいろいろなものを輸送している」

「ディックバードが海を旅するのは、輸出のためだったのね」

「リブレフォールは酷い独裁国だ。人を人と思っていない」

「私には想像もつかないけれど」

 ただ、その国にオルドアが吸収されるようになることは避けなければいけない。父が言った言葉通り、フィスもそう感じていた。

「オルドアとディストランドが一つになれば、リブレフォールで辛い思いをしている人たちも助かるかもしれないわ」

「ああ」

 レイズはそう答えた後、すぐに次の言葉を続けた。

「でも、道は一つじゃない」

「え?」

「リブレフォールの独裁者を落とすには、オルドアとディストランドが一つになるという道だけが用意されている訳じゃない。そんなことをしなくてもリブレフォールの独裁者を落とす道は、他にある」

「でも…」

「お前の表情が絶望に満ちていた理由がやっとわかったよ」

 フィスの言葉を遮ってレイズは言う。

「俺がお前を助けてやる。望まない結婚などしなくていい」

「どういうこと?」

「これからのすべてを見ていればわかる。それだけだ」

 そう言い残してレイズは背を向けた。

 歩き出した背中を呼び止めることはできなかった。

 どういうこと…? レイズはいったい何をする気なの?

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