紅い私書箱 -短編-
午後五時…






「悠紀子ぉ~ありがと~う♪
ごめんねぇ~」


「えっ」


名前なんて呼ばれたこともなく、
目を丸くする悠紀子のデスクの上に、
妃 夏奈子が書類を置く。


「んっじゃあ、私もっ
お言葉に甘えてぇ~」

「ほんっと助かるぅ~♪残業頑張って」


妃 夏奈子に続いて、
新島 芳江と金山 麗も
悠紀子のデスクに書類を置き、



悠紀子のデスクの上は、
書類の山となった。



「えっ…あのっ」

「え?聞こえない」

「あのっ…私の仕事じゃっ…」

「お願いね」


妃 夏奈子は、

前もって頼んでいたかのように
まるで

当然のように置き、

悠紀子を睨みつけていった。




『お疲れ様で~す』


嬉しそうに会社を後にする妃 夏奈子たちの
声を聞きながら、


何も言えなかった悠紀子は、

悔しさに……拳を握り…

震えた…
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