ひと休み
 宿屋に入った瞬間に目に入った、きらびやかな衣装の少女たち。

 夏祭りの踊り子として呼ばれたというその集団の目は、明らかに仲間のひとりに向けられていた。
 その後、彼が薬師だと分かるや否や、足が痛み出す子が続出し、今、彼はその少女たちの手当てをしているはずだ。

 (女の子に囲まれるの大好きな人だもの)

 だからこそ、彼は最初、自分たちのパーティに入るのを頑なに拒否した。

 『女の質の悪いパーティに入るのはごめん』

 そう言った彼を説得したのは、彼の腕にほれ込んだリーダーだ。そして、リーダーの説得の仕方もこれまた絶妙だった。
 「パーティの女の質が良かったら、良い女は近づいてこないぞ」
 この話を聞いて、リナがパーティを抜けようと思ったとして攻められることはないだろう。

 けれど、これから事情を話して迎え入れてくれるパーティはどこにもないことも理解していたので、リナは悔しさを押し殺していたのだった。
 (だけど、そろそろ我慢の限界)
 いつでも、自分を引き合いに相手の女の子を褒め、リナを蹴落とす。そんな場面に何回も出くわせば、流石に嫌になる。

 ガリオルの気配がドアから去ったのを感じて、リナはベッドの上に寝転がる。
 気分が悪いときには、睡眠をとることが一番良い。
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