あかいさくら
 それから、何度か公園に足を運んだけれど、あの二人に会うことは無かった。

満開になった桜を一緒に見ることを密かに楽しみにしていたけれど、それは叶わなかった。

 いつのまにか葉桜へ変わってしまっていた。所々で花びらが舞っていて、これも綺麗。けれど、私は満開なときが一番好きだ。
 きっと、満開になったね。なんて話したりして、また二人の……というよりゆー君による素朴な疑問に答えたりして時間を過ごすのだ。

 ちぃちゃんはあまり聞いてこないけど、私がゆー君の質問に答えると目を見開いたり、感心したりするから、多分、聞きたいことは全部ゆー君が言ってしまうのだろう。

 やっぱり双子なんだなあって会話していると思う。

 双子の神秘ってこういうことかもしれない。それから、小さい子と話すのは面白い。だから、次に話せるのが楽しみなのに二人は現れない。それが残念で溜め息を吐いたとき、タケちゃんがやって来た。

 待ち合わせに遅れたとき以来、待ち合わせは公園に変更された。そこから目的地へ歩いて行くのだけど、急に思い出したという感じでタケちゃんは言った。

「そういえば、この時期になると毎年ここにお花が置いてあるな」

 丁度そこなのか、タケちゃんは道路の端にある皐月の植え込みを見る。
つられて見ると、確かにそこには花束があって、その近辺だけ皐月が植わっていない。
言われてみればそうだった気がする。
あとお盆と彼岸の時期にも毎年花束が置かれていた。
確かここで死亡事故があったって噂で聞いたことがあった。
二人で手を合わせて、また歩き始めた。

今日は映画に行くのだから、上映時間に間に合わないと困る。

 いつからかタケちゃんと私は付き合っているということになっていたらしい。
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