あかいさくら

 私以外に誰もいないと思っていたら、小さな子どもが二人で赤い花の木の下にいる。
 まさかと思って近づけば、会話か聞こえた。

「梅、まだ咲かないねー」

「桜はもう、咲いてるのにねー」

「それは、桜じゃなくて、梅だよ」

 やはり、ゆー君とちぃちゃんだった。去年と見た目が変わっていない気がしたけど、それよりもやっと会えたことがうれしい。
 懐かしい間延びした返事とかと去年聞いたやりとりを繰り返してから、友達から彼氏に変化したことを教えた。
 二人は誰の話かよく分からないらしく、特にゆー君はあからさまに不思議そうな顔をした。

「おねえちゃんの彼氏、かっこいいー?」

 ちぃちゃんは相変わらずそっちの方が気になるらしい。思わず苦笑いしてしまった。

「どうだろう、かっこいいらしいよ」

「そうなんだー」

「会ってみたーい」

「じゃあ、もうちょっと待ってれば来るからね」

 三人で話しながら待っていると、突然、音楽が流れた。私の携帯電話からで、五分ぐらい遅れるという内容のメールだった。

「あと、五分で来るみたい」

 そういいながら顔を上げると、もう二人はいなくなっていた。辺りを見まわしたけれど、見当たらない。入れ替わりにタケちゃんがやって来た。

 なるほどね、私は妙に納得して公園を出た。きっと次に会ったときには、

「そういえば、お姉ちゃんの彼氏、かっこいいねー」

「ゆー、大きくなったらああなりたーい」

 きっと、そう言われるに違いない。





【おわり】
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