恋愛アシンメトリー!

明日は狼先生基、シローさんと会う日。
霰なんざ記憶の片隅に追いやって、俺は気持ちの切り替えを行う。

あんなイケメンが俺に興味を持つとは一体どういう事だ。
何か知らんが、世の中捨てたもんじゃないな。うむ。

「あっちゃん、シローさんってどういうタイプ?」

やはりあっちゃんみたく軽いんだろうか…。

「まぁフランクっちゃフランクだが…硬派な面も有るな。ホント、お前とそういう部分は一緒だ」

割と早くお互い打ち解けて仲良くなるだろうなとあっちゃんは笑うけれど、俺はいよいよもって緊張して来た。
男友達が居ない訳じゃない。
例の後輩達だって言ってしまえば仲の良い男友達だ。
勿論、女の子の友達だって沢山居るもんだから、別に取り立てて人付き合いが苦手な訳じゃない。…と、信じたい。

DAGASHIKASHI!

俺は、言わずと知れた『自由人』なのだ。基本的に自分の思うがままに動いている、所謂自己中なのだ。
そんな俺について来れる人間が多い訳も無いだろう。
つまり、俺を受け入れられるタイプの人間と、無理ーってタイプの人間が居るのは俺本人だってちゃんと自覚している。

折角巡って来たラブチャンスだ、明日は控え目に何とかかんとか猫を被るしか無さそうだ。
少しでも可愛い女の子になって見せようじゃないか!
そうだ、俺だってやれば出来る!!

「あっちゃん、待ち合わせは何処?」
「朝10時、荒川クリーニング前」
「ってお前ん家かよ!!」

俺はバックドロップで痛めたあっちゃんの首を揉み解しながらもすかさずツッコミを入れた。

「馬鹿、冗談だ。SAMURAIで朝の10時だ」
「え、SAMURAI!?」

SAMURAIと言えば仲間内では有名な喫茶店だ。喫茶店と言うか…飲み屋と言うか…。夜7時から喫茶店では無く飲み屋に変わる色んな意味で、重宝している店だが…。
SAMURAIは仲間内で有名なだけ有って、行けば大抵誰かに出会う。
良い店だし、飲み物も食べ物もバッチなのだが…ウッカリ誰かに見付かるのは気が引ける…と言うか、そもそもマスターや店員と仲が良い時点で色々とオワタな気がしないでも無い。

「兎に角、お前色々考え過ぎ。何時も通りのお前で良いんだよ」
「あー…うん」

そう言われても…と思いつつこうして夜は更けて行くのであった。





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