恋愛アシンメトリー!
時代劇と言って直ぐに思い付くのは多分、江戸時代とか戦国時代とかその辺なんだろうが、嗤い屋藤堂は幕末から明治初期辺りの背景を匂わせつつあまりハッキリと時代を悟らせない曖昧さから、何処か異空間のような雰囲気さえ醸し出す独特の手法で書かれていて、内容はと言えば、主人公の藤堂が『嗤い屋』と名乗る不思議な男と出会う所から始まるのだが、そもそも嗤い屋とは何なのか解らないまま藤堂はその男に巻き込まれ、不思議な体験を繰り返し、嗤い屋は笑われてナンボと言う男を最初は理解出来ない藤堂だが、最後には笑われる事では無く、笑いを提供するのが嗤い屋の務めだと知り、自らも嗤い屋の道を選ぶと言う…まぁ何処か人生論を感じさせる作品だった。
「作者の及川一郎先生って、あれ以降何処の本屋を探しでも新しい本出して無くて…未だに、私の中では不朽の名作のままだったりします」
かなり好きな小説だったので、当時色々な人に薦めたものだ。勿論あっちゃんにも。
「その及川一郎なんですが、受賞後直ぐに担当編集者が他の会社に行く事になったんですよ」
「へぇ、そうなんですか」
「それでそのままその担当編集者にくっ付いて及川も在籍出版社を移籍したんですが…同時に名前が変わりまして…」
「そうだったんですか?うわぁその情報は知らなかった!」
「それが僕なんです」
苦笑するシローさんを前に俺は硬直した。
おい、マジかよ。
何てこった。
「あんな小さな賞だったのに、内容を凄く誉めて頂いたみたいで…霞さんの存在は当時の僕にとって大きな存在だったんです…それからずっと…恥ずかしい話しですが五年近く声を掛けるタイミングを失ってまして…」
五年近く!?そんなに前から!?
「じゃ、じゃぁ私、五年以上前からシローさんのファンだった事になりますね」
何だか楽しくなって思わず笑みが零れ落ちる。
「僕も五年以上前から霞さんのファンだったんです…」
え?
「多分霞さんがまだイラストレーターとして本格的に活動する前だったとは思うんですが、無限回廊の出版社のイラストコンテストに応募された事有りますよね?Adeって名前で」
なななー!?何故それを!?だってあの絵はイラコンの二次までは受かったけど三次審査で落ちて日の目を浴びて居ない。加えて応募したのはあっちゃんでさえ知らない俺だけの秘密。
「作者の及川一郎先生って、あれ以降何処の本屋を探しでも新しい本出して無くて…未だに、私の中では不朽の名作のままだったりします」
かなり好きな小説だったので、当時色々な人に薦めたものだ。勿論あっちゃんにも。
「その及川一郎なんですが、受賞後直ぐに担当編集者が他の会社に行く事になったんですよ」
「へぇ、そうなんですか」
「それでそのままその担当編集者にくっ付いて及川も在籍出版社を移籍したんですが…同時に名前が変わりまして…」
「そうだったんですか?うわぁその情報は知らなかった!」
「それが僕なんです」
苦笑するシローさんを前に俺は硬直した。
おい、マジかよ。
何てこった。
「あんな小さな賞だったのに、内容を凄く誉めて頂いたみたいで…霞さんの存在は当時の僕にとって大きな存在だったんです…それからずっと…恥ずかしい話しですが五年近く声を掛けるタイミングを失ってまして…」
五年近く!?そんなに前から!?
「じゃ、じゃぁ私、五年以上前からシローさんのファンだった事になりますね」
何だか楽しくなって思わず笑みが零れ落ちる。
「僕も五年以上前から霞さんのファンだったんです…」
え?
「多分霞さんがまだイラストレーターとして本格的に活動する前だったとは思うんですが、無限回廊の出版社のイラストコンテストに応募された事有りますよね?Adeって名前で」
なななー!?何故それを!?だってあの絵はイラコンの二次までは受かったけど三次審査で落ちて日の目を浴びて居ない。加えて応募したのはあっちゃんでさえ知らない俺だけの秘密。