恋愛アシンメトリー!
「あっちゃーん」
「何だよ、御曹司が駄目なら……ん~ホラあの古武術家の師範代はどうだ?」
「諭士?無理無理!彼奴お堅いから俺の破天荒さに付いて来れねーっての」
あーもう、またHPが削られた。
破天荒さに付いて来れねーって自分で言っておいて何だが、物凄い悲しい物が有る。
七草 諭士。
今時珍しい超昭和男児。
バッリバリの平成っ子のクセに思想思考が堅過ぎて駄目な奴。
四歳年下で、最初に出会った時は無口で何考えてるのかなんて全く解らなかったが、何とか心開かせて仲良くなってみた。
だが、併し。
あんなに可愛かった筈の諭士も、仲良くなったのは大失敗。俺に遠慮せず日々の在り方を諭してくる。
一体何処で間違ったのだろうか、四歳も年上の俺なのに、彼が口を開けば常に説教が始まり、俺に渇を入れてくる。
「言っておくが、お前の弟にはちゃんと彼女が居るし、佑司にも彼女が居て、長介にも彼女が居るのは解ってるよな?」
「その彼女持ちがお前の恋路を悉く打ち消してんだから爆笑だよな」
爆笑出来ないからアンタに男紹介しろって言ったんだろうがこの野郎。
みんな彼女居るくせに俺の所有権争いしやがる不届き者共だ。所有権主張する前に俺を物扱いするんじゃねえっての。
「じゃぁお前さんお気に入りの岳ちゃんでは?」
NANDATO!?
岳ちゃんだと!?
あのTAKEHITOちゃんだと!?
「無理無理!!絶対無理!!岳は眩し過ぎて無理!!」
陽向 岳人。
超エンジェル。
可愛過ぎて寧ろ凶器。愛想が良過ぎて駄目な奴。
三歳年下で、あっちゃんの弟君の幼稚舎時代からの友達なのでそれなりに付き合いは長い。
だが、併し。
可愛くて仕方なくて可愛がりすぎた所為か、弟ポジションが定着。一時期は岳ちゃんに夢中だったけど、彼が高校に上がる頃には、他の阿呆共と変わらないぐらい俺の事を自分の玩具だと思うような奴に成り下がっていた。
それでも結局可愛がってしまう辺り、俺の一番のお気に入りというのが解るらしく、誰も岳ちゃんには手出ししない。
俺が本気でキレるのが解ってるからだ。
かと言って俺は多少の贔屓はすれどみんなにほっとんど平等に接しているのだから、後輩同士で揉める事なんて有りはしない。
嬉しいやら悲しいやら解らんがこれが実情。