純愛♡ごっこ
 

「名前は?」


運転席でハンドルを握って、シンが訊いた。


「知らんし。」


横を向いたまま、ぶっきらぼうに、あたしは答えた。



─ なんで教えなあかんねん‥

  もぉ、どーでもイイし‥



助手席のドアは開かなかった。


「無理やで。開かへんようにしてるからな。」


「変態‥。」


さっきの赤信号で、逃げ出そうとしたけど無駄だった。

助かるかもなんて、一瞬でも期待したことが、今更ながら馬鹿らしい。


車高の低い改造車は、けたたましい唸り音を上げ、夜の山道を走り抜けた。


 
< 11 / 666 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop