純愛♡ごっこ
その日は、珍しく夕方に高校生が来た。
制服で、この付近の高校の生徒だと分かった。
「いらっしゃいませ。」
開いた自動ドアから入って来た彼は、一瞬、場違いな雰囲気にでも飲まれたかのように、店の中を見渡した。
確かに、店内は、お世辞にもオシャレだとかモダンだとか言えない。
年輩女性が好みそうな装飾で‥。
「カット、お願い出来ますか?」
彼は、肩に掛けたPUMAのロゴが入ったエナメルバッグを下ろし、あたしに訊いた。
「はい。お荷物お預かりしますね。」
夏休みなのに、部活帰りなんだろう。
客用のロッカーにエナメルバッグを入れ、あたしは、彼をシャンプー台に案内した。