純愛♡ごっこ
 

「え?」


あたしは波琉さんを見上げた。

彼は微笑むと、しゃがんで線香花火に火をつけた。


「リクみたいなのは可愛いけどね。暴力とか、そーゆことするヤツって、自分自身のことや相手のキモチが分かってねーんだと思う。だから、変われないんだ。」


小さな火花を見つめて、彼は話し続ける。


「愛ってのは、つまりは思いやりじゃん。相手を思いやれないヤツは、人の思いにも気付かねンだよな。きっと‥。」



それが当たり前だと勘違いして、有り難さを感じない。

感謝のキモチを持てないから、相手を思いやれない。



静かに話す波琉さん。

彼の指先の延長線上で、線香花火の真っ赤な玉が地面にポトリと落ちた。


 
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