純愛♡ごっこ
 

「ね、ちょっと座りたい。」


「ユーナ、もぉ疲れたん?」


「うん。」


あたし達はベンチを目指し、通り掛かった噴水の側で立ち止まった。

噴水には、沢山の硬貨が水に沈んでいる。


「お金、落ちてる。貰って帰ろっか?」


あたしのくだらない冗談に陸は微笑んで、ジーンズのポケットから小銭を取り出した。


「知ってる?噴水の中に、後ろ向きにコインを投げて願い事を唱えたら、叶うって。」


「後ろ向きに?」


「そ♪こーやって。」


彼は、噴水を背に立って目を閉じると、硬貨を一枚、放り投げた。


銀色の硬貨は綺麗なカーブを描き、噴水の上段にある銅像の足元にポチャンと落ちた。


 
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