純愛♡ごっこ
聞き覚えのある声に驚いて、思い切り振り返った。
その拍子に、被っていた帽子がズレた。
片手で帽子を直し、あたしは目の前に立っている男を凝視した。
「シン‥。」
「久しぶりやんけ。」
まだ捕まって無かったん?
それとも“警察に追われてる‥”なんて、養育費を払いたくない為の嘘?
シンの後ろから、慧が無表情な顔で、こちらを見ている。
「話し掛けんといて!」
あたしは、ぶっきらぼうに言葉を吐き、空羅をベビーカーに乗せた。
「待てや!」
シンは、あたしの肩を強い力で掴んだ。