純愛♡ごっこ
 

マンションの前で奈月の車を降り、彼女に礼を言った後、あたしは足早にエントランスを目指した。


焦りを感じながらエレベーターに乗り、開いた扉から小走りで部屋の前まで駆ける。


シンが帰宅していても、そうで無くても、大して意味を為さないのに、そっと鍵を外した。


そして、やはりそっとドアノブを回すと、物音を立てないようにドアを開けた。


「良かった‥。」


玄関には、彼が履いて行った靴が無かった。

あたしは胸を撫で下ろし、大きく息を吐き出した。


「急ご‥。」


シンがいつ帰宅するかも分からない。

あらゆる言い訳を考えながら、ドアの鍵を閉め、チェーンロックをした。


 
< 90 / 666 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop