運命の、その場所で

歩きだした道…

二人にはあまり会話がなかった。
送ってくれなくてもよかったんだけど、
彼は無言で私の横を離れなかった。

その優しさが、なんだか嬉しかった。





「そー言えば、お前名前なんて言うの？」


家まで残りわずかになった時、
彼からの突然の質問に私は驚き、言葉に迷ってしまった。


「え？え…私？」

「うん。今、俺とお前しかいねーだろ？」


彼は冷静に、白い息の中で微笑んでる。


「あ…そーだよね。」

私はへへって笑って前髪を触る。


緊張しているときのクセ。



「オレは、ナチ！櫻井那智」


「…わ、私は、ユキ！飯塚柚葵」


彼の勢いと一緒に自分も名前を言う。


「ユキかぁ～。」

「うん。」