My life without meaning
いたたまれない気持ちになって、裕太の背中をそっとなでた。

「好きになってくれてありがとうね。気持ちは大切にしまっておくからね。」

そう言って手を離そうとした。

「ナツさん？」
「ん？」
「しばらくこのままでいてよ。」
「･･････。わかった。」

「オレちゃんとわかってるよ。ナツさんには旦那さんがいるし、壊しちゃいけないって。でも、ほんとに好きなんだ。その気持ちだけは旦那さんにも負けない。」
「裕太･･････。」
「オレがもっと早く生まれてたら、ナツさんのこと幸せにできたのに･･････。」
「私は幸せそうに見えない？」
「わかんないよ。ほんとのことなんて。どこの家だって同じでしょ？」

　少し悲しそうな顔で私を見る。裕太の言わんとすることが手に取るようにわかって私は彼の手をそっと握った。



　２人の間にとても長い時間が流れ、時計の針の音だけが静かに時を刻む。



　私は、前に進むことを恐れ、後ろへ戻ることも惜しく感じていた。
もし裕太の気持ちを受け入れたら、この平凡で退屈な生活は一瞬にしてリスクの高いものになるだろう。さらに２人の関係を誰かに知られたら、今まで培ってきた信頼すら失い、この街にもいられなくなるかもしれない。

　何もなかったことにしてしまえば、今までと同じ日々に戻り、どこか満たされない気持ちをもてあます。

　本音を言うと、もう女として見られることはないと思っていた日々の中で、彼の気持ちに気づいたとき、少なからず誇らしい気持ちになったのだ。


　現実に引き戻されるように、私は時計を見る。かなりの時間が経っている。私はそっと裕太から手を離そうとした。

「離さない！」

　強く引き寄せられた瞬間、不意打ちのキス･･････。



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