水鏡
 吹き渡る心地よい風も、空も雲も、空の真ん中で輝いていた太陽も見えなくなってしまいました。





「おい、ライトだ。早く!早くしろ!」

 その声が合図で、数人の男たちが飛び込む水音が聞こえてきました。

 

 男女がからだを寄せ合って、成り行きを見つめています。

「あの子は、泳げないのよ。どうなるの?失敗だったの?」

 女はヒステリックに男を責め立てます。

「待って、彼らに任せよう……」

 男は、女の肩を優しく抱きました。

「見つけた!大丈夫だ!!」

 大きな水槽の真ん中から声がしました。

 その声にほっとしたのか、女は泣きじゃくりました。

「ああ、私が悪いの。私が仕事や他のことに気をとられすぎて、あの子をロボットのように無感情な孤独の中に閉じ込めてしまったのよ……」

「自分を責めないでくれ。私も悪いのだから……まさか、飛び込むなんて……」



 水槽のそばに引き上げられた少年は、気を失っているだけでした。


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