【短編】幼馴染みな僕らだから
乗り越えたい壁
屋上に着くと、智輝は真っ直ぐフェンスの近くまで来た。
このフェンスは、生徒が落ちないようにという配慮のもとに造られたらしいが、高校生には容易く登り越えることの出来る高さだ。
つまり、低い。
まぁ、そんな事はどうでも良い話。
智輝は、フェンスに肘を付き空を見上げた。
空にはところどころにポツンと雲がある程度の晴れ晴れとした天気だ。
雲が無いような快晴よりも俺は、こんな風な感じの……真っ白な雲が浮いているような空が好きだった。
昔からずっと。
綿菓子みたいで美味そうだし、あの上に乗ってみたいって思っていた。
ああ、そういえば。
幼い頃、アイツと雲を掴もうと必死に手を伸ばした記憶がある。
伸ばしても伸ばしても届かない──そんなもどかしい気持ち──今となってはガキの頃の懐かしい思い出だ。
「何で……こんなふうになっちまったんかなぁ」
誰に言うわけでもなく、ただ自然と溢れた独り言は風に乗って流れていく。