何度でも言おう、君が好きだと。

「ハル落ちこぼれだからさぁ、家で練習しないと授業についてけなくて。
でも夜はオバケ出たら怖いでしょ、だから朝早起きするの」


「それにしたって早すぎないか?」


「そんなことないよ、晩御飯作ってから出るから」


「え!?ご飯作ってから学校行ってんの!?」


「うん、帰ってきたら疲れてるから何もしたくなくて。
だから朝作ってって、帰ったらもう食べるだけの様にしてく。
スクールまで片道1時間かかるしね。5時でも遅い位。」


心底驚いた。

あの、ハルが。

あのハルがここまで頑張っているなんて…思ってもみなかった。


「す…凄いな…」


予想外過ぎて思わずタバコを持つ手が震えた。


「自分がやりたいって言った事だからね、頑張らないと」


そう言って笑うハルを見て目眩がした。

頭を鈍器で殴られた時の様に、
頭の中がグワングワン音をなって揺れているのが解った。



俺はハルのほとんどを知っていると思っていた。

こんなハルを、俺は知らない。

目の前にいるハルは、俺が知っているハルじゃない。

俺に微笑みかけるハルは、俺が知っているハルじゃない。

バカでダメでどうしようもないハルしか、俺は知らない。

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