寂しがりやの猫
ふと 端のほうのテーブルを見ると またベソをかいている市川を田村が慰めていた。


真壁は横で笑いながら市川を叩いている。


― またやってるよ。

私は 可笑しくなって彼らのテーブルに近付いた。

「こら!市川!また泣いてんの?」


市川は 涙でぐしゃぐしゃの顔を上げる。

「な、中河原さあん… 辞めないで下さいぃ~」

市川は 私にすがりついてくる。

「ヤダー!鼻水つけないでよ!」

私は バックからティシューを取り出して、市川の涙と鼻水を拭いてやった。


「ごめんね。ありがとね。こんなオバサン好きになってくれて」


「中河原さん…」


「頑張るんだよ。これからいい恋して いい男になるんだよ」


「はい…」

私は 市川の頭を撫でてあげた。

市川は 私の手を持って擦り擦りと頬を寄せてくる。

「あーあ… こいつ とうとう壊れちゃったよ」

真壁がゲラゲラ笑いながらそれを見ている。

田村は ずっと 神妙な顔つきで私を見ていた。


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