寂しがりやの猫
「中河原さん、お世話になりました」


田村が不意に言った。
「あ、こちらこそ… 色々 ありがとう」


田村と真正面から見つめあう。


数秒が随分長く感じた。


「あのさ、田村」


「え」


「いつか 私のこと 猫に似てるって言ってたけど」

「はい」

「田村は 小型犬みたいだね」

「小型犬…ですか」

「うん」

「中河原さん」

「はい」

「寂しいなら ペットでも飼ったら どうですか」


「え」


「例えば 小型犬とか」


「……」


田村は ちょっと笑いながら お元気で、と言った。
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