寂しがりやの猫
『もしもし?中河原さん? 電話くれましたか』


田村の声が 心に沁みてくる。


「くれました」


『あ、すいませんでした。お見送りできなくて。ちょっと得意先でトラブルが』


「そうなの?」

思わず仕事モードになりかけて、あ、と口を閉ざす。

『やっぱり中河原さんが居ないと大変です』

「アハハ… ほんとに思ってる?」


『はい。結城さんも課長も パニック状態ですよ』


「田村は?」


『俺は…』


私は 田村の言葉をじっと待った。


『…寂しいです…』


「…ありがと、私も寂しい」


心がまた暖かくなり、電話を切ろうとした。

『あの!中河原さん』

「はい」


『俺、来年 ちょっと居なくなります』


「え」


『急ですけど、来年 留学することになりました』

「へぇ」

何を言っていいのか判らない。

田村に置いていかれる寂しさで胸が潰れそうだった。

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