寂しがりやの猫
「そっか…」
初めて母親の言葉を理解出来る気がした。
ほんとうにそうだ。
たった一人との出逢いが、人生をガラリと変えてしまう。
ただ 田村にとって私が、その一人になるのかは 全く自信が無かった。
田村は 若いし、頭のいい子だから。あえてこんなオバサンは選ばないだろう。
洗面所で化粧を落としながら ハァ…とため息をついた。
― ため息つくと 幸せがひとつ逃げていくって 聞いたことあるな…
もう一度 ハァ…とため息をついて なんだか可笑しくなってきた。
私には 無くして困るものなんか何もない。
だったら 何も怖がることないじゃない。
いつか また 田村に逢える日が来たら、ちゃんと気持ちを伝えよう… そう思った。