寂しがりやの猫


「そっか…」


初めて母親の言葉を理解出来る気がした。


ほんとうにそうだ。

たった一人との出逢いが、人生をガラリと変えてしまう。


ただ 田村にとって私が、その一人になるのかは 全く自信が無かった。


田村は 若いし、頭のいい子だから。あえてこんなオバサンは選ばないだろう。

洗面所で化粧を落としながら ハァ…とため息をついた。


― ため息つくと 幸せがひとつ逃げていくって 聞いたことあるな…


もう一度 ハァ…とため息をついて なんだか可笑しくなってきた。


私には 無くして困るものなんか何もない。
だったら 何も怖がることないじゃない。

いつか また 田村に逢える日が来たら、ちゃんと気持ちを伝えよう… そう思った。




< 140 / 214 >

この作品をシェア

pagetop