寂しがりやの猫
「なるほどね。まあ、田村にしたら なかなか手が出しにくいっていうのは判る」

仲澤は うん、うんと頷きながら言う。

「けど… 好きだったらキスしたくならない?しかも 送って貰って、二人きりだったんだよ」


「ハハハ… なんだよ、奈都 えらく必死だな。そんなにチュウしたいなら俺がしてやろうか」


「ばか。そうじゃなくて」
私は、ちょっとムッとして仲澤を叩いた。
「奈都はさ、今までの経験で何でも考えるんだろうけど」

「ああ、うん」


「田村ってのは そういう当たり前の男じゃないんだろ?だから奈都は惚れたんだろ」

「あ、うん…」

そう言われたらそうだな…

私は 自分の常識で考えてたけど… 田村には 田村のタイミングがあるのか…。


「ありがと、そうだよね。私 なんか焦り過ぎてたみたい… 恥ずかしい」


「ハハハ…、まあ そんな年下だと 色々考えるよな」


「そうなのよねぇ… 飽きられたらどうしよう、とか」


「おっ 珍しく弱気だな」

「ほんと、なんでだろ」

アハハ… と二人で笑っていると いきなり後ろから声を掛けられた。

「中河原さん?」

「え… あ、千里ちゃん…」

あまり考えずに会社の近くで呑んでいたことを忘れていた。

― だって 相手が悠里だったからさ…

言い訳するのも変に思って笑って挨拶した。
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