寂しがりやの猫
「はじめまして。田村といいます」

田村の隣に私。田村の前に社長が座った。

「はじめまして。中河原さんの会社の松永といいます」

社長は 真っ直ぐに田村を見つめる。

私は 居心地が悪くて 二人を代わるがわる見た。

「単刀直入に聞くけど」

社長は いきなり話を切り出した。

「田村さんは 中河原さんと結婚するつもりは あるのかな」

私は 驚いて社長を見た。

「社長！そんないきなり…」


田村は 私を制して社長を見た。

「それは、貴方に言う必要があるんでしょうか。俺と奈都さんの問題であって、松永さんには関係無いと思いますが」


田村は 淡々と話しているが、膝の上で握った拳が震えている…

― 怒ってる…？

私は 田村の横顔をじっと見た。

「いきなりこんなことを聞いて失礼、悪かったね。実は 先日 中河原さんに結婚を申し込んだんだよ。けれど断られた。俺としては、田村さんより俺のほうが彼女に相応しいと思ってる。

だから どうしても君に聞かないと納得出来なくてね」

「俺は… 」

田村は そのまま黙って下を向いた。
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