寂しがりやの猫
市川
悠里と別れて ぶらぶら歩いていると 不意に携帯が鳴った。

見覚えのない番号。 怪しいな…と思いながら一応通話ボタンを押した。

『あ、も、もしもし… あの…』

「はい。どちらさまですか?」


悪戯かと思いキツイ口調になる。


『あ、すいません、あの、市川です。分かりますか』


「…ああ、市川くん?13課の?」


『はい。すいません… 突然電話なんかして』

「別にいいけど…。何?」

だいたいの予想は ついていたが、あえて冷たく突き放した。

こういうMっぽい男は これを喜ぶ。

『すいません、あの… 電話番号 結城さんに聞いたんです』

結城とは うちの課に入った新人の女のコ。
― 何 勝手に教えてんのよ… と思いながらも そう、とあっさり答えた。

『あの… 中河原さん』

「はい」

『お、俺… ハァ…ハァ…』

― げ… もしかして ひとりエッチとかしてんの?


「何?手短にしてくれる?今から人と逢うから」

更にきつく言うと 懇願するような声が聞こえてきた。

『ハァ…ハァ… イかせて下さい… 奈都さん』


「……」


ピ…と電話を切った。

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