寂しがりやの猫
朝。

出勤してデスクに着くと おはようございます…と小さな声がした。

振り返ると 結城千里が 申し訳なさそうな顔で立っている。

「ああ、結城さん。おはよ」


「あの すいません、私、勝手に市川くんに中河原さんの電話番号教えてしまって」

「ああ、別にいいよ。大丈夫」

私は ニコッと笑い、気にしないで、と言った。


「なんか 市川くん凄く必死で…。どうしても教えてくれって言われて。 本人に聞けば、って言ったんですけど 聞けないって言うから」

「ふうん」

ちょっと 可愛いな、と思ってしまった。 そんなに必死になるほど 私にイかせて欲しかったのか。


「はい。電話ありましたか?」

「ああ、うん。あったけど 私、急いでたから すぐ切ったけどね」


「そうですか。良かった」

結城は頭を下げ、お茶を淹れに行ったので チラッと13課のほうを見た。

― まだ来てないのか。


なんとなく どんな顔で来るのか見てやりたかった。
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