寂しがりやの猫
ランチの間も 特に余計な事は話さず、けれど空気を和ませる程度の会話をしてくれる。

「こないだうちの猫がさ…」

と 結城に話しているのを チラッと聞き耳を立てる。

… ふぅん 猫 飼ってるのか。 私も猫派。
と 勝手に頭の中で思う。


「これ 美味しいですよねー」

と もう一人の女のコに言われ、ほんとだね、と答えた。

Jホテルのランチは 味も良いし、盛り付けもお洒落だけれど なかなか行けないのでそれだけでも嬉しかった。けれど、田村は いつの間にか窓際のいい席を予約してくれていて、私達は 待つことなく すぐに食事が出来た。

なんていうか、スマートなんだよな、見た目と違って。

ふ… と一人で笑ってしまう。

この顔で スマートって…

ニヤニヤしていると 不意に田村に声を掛けられた。

「中河原さん。思い出し笑い、ですか」


「え」

笑い顔のまま 顔を上げて また プッと吹き出した。

「あ、ちょっと ショックですよ、俺。 見るだけで笑うような顔ですか?ま、確かにイケメンでは無いですけど」


「あ、アハハ… ごめん!」


堪えきれずに 笑ってしまった。

結城が 不思議そうな顔をしていた。
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