寂しがりやの猫
また 二人で 電車のつり革に掴まって並んだ。

「悪い奴じゃないんですよ」

少し黙っていた田村が不意に言った。

「うん…」


私は なんとなく素直な気持ちで話を聞く。

「ただ 凄く純情で、不器用なんですよね。中河原さんのことは、最初から 好きだったみたいで」

「え…そうなんだ」

私は ちょっと驚いた。

「はい。あのカラオケに行った日も 西原課長に中河原さんが無理矢理連れて行かれるんじゃないかって 市川が心配して」

「そうだったんだ」

私は ちょっと 可哀想な気がしてきた。

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