寂しがりやの猫
電話
プルルル… プルルル…
何回か呼び出し音が鳴り、田村であろう声がした。
『もしもし?』
少しキツイ口調。
そりゃあ そうだろう。こんな夜中に誰だか判らない番号。
この前の市川からの電話と同じだ。
「あ、遅くにごめん。中河原です」
『え?中河原さん?』
ちょっと驚いた声。
「ごめん…今大丈夫かな」
と謝ると いや、大丈夫ですよ、と明るい声が返って来た。
今まで 顔のコミカルさのせいで気がつかなかったが、田村は いい声をしている。 甘く低めの声。 心に深く沁みてくるような声だった。