寂しがりやの猫
「へぇ。市川くんって中河原さんが好きだったんだ」

結城が 今初めて気がついたように言う。

「え、お前 気づいてなかったの?」

田村がおかしそうに言った。

「うん。ヤダ、また天然だとか言うんでしょ」

結城が田村を軽く叩く。

「ハハハ… 何も言ってないだろ」


田村も愉しそうに笑っている。

二人の会話に入ることが出来なかった。


そうだよな、これが自然だよな。

私みたいなオバサンの入る余地は無い。


無駄な抵抗は止めておこう。

チクチクと痛む胸を押さえて無理矢理に笑顔を作った。


「二人って なんかお似合いだねぇ」


「え!」

結城が私を見る。

みるみるうちに結城の顔が真っ赤に染まっていく…。


― あ、れ? 何?なんかこれって…


田村を見ると ちょっと困ったような顔で笑っていた。

「あ、なんか 私 変なこと言った?千里ちゃんごめんね」


「あ、大丈夫です!」

結城は パタパタと フロアに入り、お茶を淹れに行った。
< 54 / 214 >

この作品をシェア

pagetop