寂しがりやの猫
「中河原さんって 凄い いい女ですよね」

「は…」


真壁がゲラゲラと笑い、周りにいた新入女子社員達がクスクス笑っている。

「なに 笑ってんのよ~ しっつれいね~」

私は 真壁を叩き、女子社員達を冗談ぽく睨む。


けれど 田村は 大真面目に 私を見ている。
これが いい男なら すぐに堕ちるんだろうけど… チビでギョロ目の田村に言われてもなあ…


私は なんとなく 恥ずかしくなって 席を立った。


「どこ行くんですか?」


田村が すかさず聞いてくる。

「やあねぇ 御手洗いに決まってるでしょ」

私は フラフラと立ち上がり、廊下に出た。

…あー なんか調子狂う…

田村のせいだ…

トイレを済ませ、鏡を見ると 化粧の禿げかけたどこから見ても40の女が映っている。

― どこがいい女なのよ!バカにすんな!

腹が立って 鏡に向かって イーっとしてみる。

皺だらけに なって 慌てて 化粧を直した…。
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