寂しがりやの猫
デスクに座ると結城がお茶を持って来てくれた。

「ありがとう」

「いいえ」

ニコッと笑顔で返される。


もうこの笑顔すら私のコンプレックスになりつつある。

結城は 狡い。笑顔だけで人の心を掴むんだから…

田村だって やっぱり結城が好きなんじゃん？
オムライス半分ことかしてさ。

私は 朝からなんとなくイライラしていた。

「あの、中河原さん」

田村が遠慮がちに声をかけてきた。

「今日、市川と三人でランチしませんか？アイツやっぱり誘えないとか言ってて」


「ああ。別にいいけど。割り勘にしてよね。田村くんにこれ以上おごられる理由も無いし」


「あ、はい」

あーあ。なんでこんなに可愛くないんだろう。 結城ならうんと可愛く演じるんだろうな…。


ちょっと落ち込んだ。

「あの」


また 田村に呼ばれる。
「なに？」
「なんか怒ってます？」


「怒ってないわよ」

「そうですか…。俺が失礼なこと言ったから怒らせたのかと」


「え」


「こないだ電話で。貰ってあげます、なんて言って」

「あ…あれね…」


私は ドキリとする。

「あれは あくまでも 中河原さんが本気で結婚したくなったときの話ですから。気にしないで下さい」

「どういう意味よ。私が結婚なんかする訳ないって言いたいの」

「わかりません。でも 今は 結婚なんて望んでるように見えないから」


「はあ？何よそれ。したいわよ。私だって。明日にでも 寿退社したいわよ」


「そうですか」

田村は そのまま黙ってしまった。

なんだか変な空気になってしまった。
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