寂しがりやの猫
旅館に到着し、部屋割を聞いて それぞれの部屋に向かう。

私は結城と村野との三人部屋だった。

部屋に入ると 二人は さっそく荷物を開けて皺にならないように着替えをハンガーに吊るしている。


― やっぱり女のコってこういうのが大切なのよね。

感心しながらも、私はやる気にはならず、テレビを付けてお茶を飲んでいた。


― コンコン!

部屋がノックされる。

「奈都?居るか?」

「ああ、仲澤くんかな。ちょっと出てくるね」

二人に言い残し、ドアを開けた。

案の定 仲澤が立っていて、散歩に行こう、と誘われた。

二人で外に散歩に出る。

紅葉が綺麗で心が癒された。


「なあ、奈都」

「ん?」


仲澤は、不意に手を繋いできた。


「俺達、やり直せないかな」

「え」


確かに予感は あった。ちゃんと付き合いたい気持ちもある。

でも…

田村の顔が浮かんで来た。


「好きな奴でもいんの?」


仲澤に聞かれてドキリとする。

「そういう訳じゃ」

「じゃあ いいだろ?」


昔と同じように、仲澤は 自信満々で 私に迫ってきた。

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