寂しがりやの猫
「ごめん、ちょっと考えさせて」

私は そっと仲澤の手を離す。

「判った」

仲澤は そう言うと後は何も言わなかった。
大阪での面白い話や、昔の同期の愉しかった話を色々してくれた。
私は 少しずつ若かった頃の自分に気持ちをリセットしていくような気分だった。


暫く散歩して 旅館に戻ると、外湯周りをする為に出てきた田村と真壁と市川に逢った。

「あ、課長、お疲れさまです」


市川は 慌てて頭を下げ 二人も頭を下げる。

「おう。外湯か、気をつけてな」

ポン… と 仲澤は何故か田村の肩を叩く。

田村は チラッと私の顔を見て頭を下げた。


「なんか… 愛人みたい、私 」


三人が去った後、ポツリと言うと、仲澤は ハハハ… 確かに、と笑う。

「俺としては 愛人じゃなくて恋人希望なんだけど」


「うん。考えとくよ」

入り口で別れて部屋に戻った。


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