寂しがりやの猫
悠里が 帰った後で 仲澤が車で迎えに来てくれた。

久しぶりに男の人の助手席に乗る気がする。
ちょっと緊張した。

― こういう時、どんな会話してたっけ?

ここ数年は 男の人と逢うといえば すぐにエッチしてたから… 普通の会話が浮かばない。

― 田村となら 盛り上がるんだけどね…

ふっと またあの小型犬のようなコミカルな顔が浮かぶ。

つい一人で笑ってしまった。


「何?どうした?なんか愉しそうだけど。悠里さんと何話してたの?」


「え!別に 大したこと話してないよ。モンブランが美味しいとか そういうこと」

「モンブランかあ… 甘そ…」


「仲澤くんは 甘いの苦手だもんね」


私は 昔に想いを馳せる。

仲澤といると、それ以外浮かんで来ない。

あの頃 若かった私達。

でも 今はもうあの頃じゃない。

私も仲澤くんも 変わってしまったよね。

チラッと横顔を見る。
相変わらずかっこいいし男前だけど、やっぱり色んなものを背負ってしまった顔に見えた。
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