風の行方
平々凡々な私達
 


好きとか嫌いとか、そんなん私には必要ないっす。つか面倒っす。面倒臭いだけっす。



「有栖川さん、好きですっ」

「あ、ごめんなさい」



呼び出された中庭、天気は晴れ。太陽はキラキラと輝いていた。
場所や天気共に良いチョイスしてんだけどタイミングが悪いよね。
次体育なんだよね。早く着替えなきゃ怒られちゃうじゃんか。ちゃんと其処まで考えなきゃ駄目だよー。

私が無表情のままそう即答すれば、名も知らぬ男は唖然と阿呆みたいな顔をした。それこそ予想外だとでも言いたげに。
私はペコリと首だけを動かすとさっさと教室に戻った。早く着替えてグラウンド行かなくちゃ。だって田中ちゃんは怒ると般若になる。要するに怖えー。非常に怖えー。

背中越しに小さく呼び止められた様な気がしたけれど、見事なまでに知らないふりをかましてやった。

好きとか嫌いとか、そんなん私には必要ないっす。つか面倒っす。面倒臭いだけっす。
私にとってはそんな事よりも、田中ちゃんに怒られない事の方がよっぽど大切だった。

有栖川志帆、高校一年生。そんな何気無い春の昼下がり。


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