桜ものがたり
  次の日曜日、鶴久結子と柾彦は、桜河のお屋敷のお茶会に招かれ、

おみやげに桜の挿し木を持ち帰った。


 その桜の挿し木は、鶴久病院の庭で見事な枝を広げることになる。

 それとともに鶴久病院は、大きな病院となり、ますます医療を発展させていった。


夏の休暇に入り、お屋敷に帰省した光祐さまは、祐里から柾彦を紹介された。

 祐里に優しいまなざしを向ける柾彦に対して、光祐さまは、弟のような

既知の親近感を抱いた。

 柾彦は、光祐さまの隣にいる祐里が一段と美しくそれでいて寛いでいるのを

実感し、祐里の胸の内の光祐さまの絶大なる存在感を思い知った。
 
 光祐さまに会うまでは、祐里の相手として自分にも可能性があるのでは

と考えていたのだが、柾彦の恋心は瞬時に打ち砕かれた。


 光祐さまは、夏の休暇中、事ある毎(ごと)に柾彦を誘って祐里と共に三人で

楽しんだ。

 柾彦は、複雑な想いを隠しつつも、それ以来、光祐さまを兄のように慕い、

末永く二人の交流は続くこととなった。
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